◆磨き作業 2   《シングルポリッシャー》

 

光男  「今磨いているポリッシャーの先に付いているのは、どんな種類のものなんですか?」

 

赤城  「これはウールバフといいます。

   磨き作業は、粗い(あらい)磨きから、だんだん細かく磨いていきます。

   紙ヤスリ(ペーパー)で木などを磨く時も、粗いヤスリで真っ白にキズだらけにしてから、少しずつヤスリの番手を上げていき(細かいものにしていく)、前の番手のヤスリでつけたキズを落としていき、どんどんツヤが出てくるのと同じです」

 

裕太  「じゃあ、この車も、真っ白にキズだらけにするんですか?」

 

赤城  「いえいえ、そこまではやりません。

   磨き屋の中には、ペーパーを当てて真っ白にしてから磨き始めるというところもあるそうですが、私にはできません。

   コピー紙1枚程度のクリア塗装をめくらないように磨くことが精一杯で、とてもペーパーなんて・・・」

 

裕太  「でも、ガシガシ削ってますよね」

 

赤城  「ガシガシやっているように見えますが・・・

   うちの磨きはキズを削り落とすのではなく、キズを見えなくするようにしているんです」

 

光男  「見えなく?」

 

赤城  「ええ、それでは、実験をしてみましょう。   こちらに来てください。

   この汚れた営業車のドアノブ付近、爪あとで黒いキズがいっぱいありますね。

   これをコンパウンド(磨き粉)で磨くと・・・」

 

裕太  「あっ。キズが消えた」

 

赤城  「キズが消えた・・・ように見えますよね。

   でも、光を当てて、じっくり見ると・・・」

 

裕太  「どれどれ・・・あ、キズが残ってる」

 

光男  「キズの中に入っていた汚れが取れると、キズがなくなったように見えるんですね」

 

赤城  「そうです。

  このドアノブの内側をポリッシャーでガシガシ磨くのは無理ですし、手磨きはしますが、キズが落ち切らない時は、ある程度磨いておしまいにします。

   そして、この車のボンネットのココ、大きなキズがありますね」

 

光男  「ええ」

 

赤城  「ここを、ガシガシ磨いてみます」

 

赤城はコンパウンドを多めにして、ポリッシャーのスピード少し下げて、ゆっくり、丁寧に磨き続けました

 

赤城  「どうでしょうか?」

 

裕太  「あっ、消えてる」

 

赤城  「では、光を当てて、じっくり見てください」

 

裕太  「あっ、キズが見える!」

 

光男  「さっきのドアノブは、キズの中の汚れが取れたんだけど、今度のは汚れはなかったし・・・」

 

赤城  「今のは、キズのフチのとがった部分を丸めたんです。

   キズを完全になくすには、キズの深さだけ削らなくてはならないので、大変な作業になりますし、塗装が薄〜くなってしまいます。

   キズのフチはとがっているので、キラっと光ってみえます。

   そのフチを丸めるように磨けば、キズは残っていても、目立たなくなるんです。

   うちの磨きはこの程度なんです」

 

裕太  「心が深くキズついても、カラオケに行って大騒ぎするとキズがやわらぐってことでしょうか?」

 

光男  「たとえになってないと思うよ」

 

赤城  「私も、そう思います・・・

   でも、すべてのキズのフチを丸めて見えなくすることはできません。

   深いすキズは落としきれないこともあります。

   できるだけ見えるキズを減らして、コーティングしています」

  

 

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